カテゴリ:青年漫画
ジャンル:中華戦国時代の戦争漫画
備考:トンデモ軍師
グランドジャンプで連載中の戦争漫画。
キングダム同様中国の戦国時代を描いた漫画だが、はっきり言ってこっちのほうが面白い。
多くの戦争バトル漫画では将軍や戦士が主人公になるが、こちらは孫子の片割れである軍師『孫臏』が主人公。
孫臏は足の骨を抜き取る刑によって自力では歩くこともできない身体であり、数多くの奇策とハッタリを用いて敵軍を打ち破っていく。
敵ごと石橋を落としたり、巨大な弓で敵軍を打ち払ったり、見ごたえのある策が多い。
何よりも面白いと思うのは、その矛盾したリアリティ。
現実離れした描写をしながら現実を語る、その噛み合わない世界設定にある。
臏は軍師漫画であるため、キングダムや龍狼伝、蒼天航路など一般の漫画にありがちな非現実設定を強く否定している。
・一騎当千の武将など存在しない
・どんな武人でも、一度に20人と戦うことはできない
・弓は高速で飛来するため、武器で打ち払うことは不可能
上記はまっとうな主張であり、その他の戦国・三国志漫画のほうが間違っているのは明白。
それ自体に異論はない。
しかし、その現実設定を臏の登場人物が守っているかというと、非常に怪しい。
というか、絶対に守ってない奴がいる。
特に物語のラスボスである単于は人知を超えた猛将であり、20人がかりでも、弓矢で遠くから狙撃しても、全く殺せる気がしない。
というか、弓で殺せるなら、最初からやればいいじゃないか・・・
その他にもリアリティを犠牲にして漫画としての面白さを追求している点が多々あり、冷静になって考えるとおかしな作戦や煽動が多いことに気付く。
足さえ動かない軍師が空中を飛び回って敵に襲い掛かる漫画が、現実の兵法を語るのだから、滑稽極まりない。
漫画としての正しさと、戦争における正しさは両立しない。
そのことを強烈に教えてくれる作品だった。
とにかく熱い漫画である。
軍師のくせに熱血で、青年向けのくせに少年漫画している作品である。
なんか矛盾している気もするが、その矛盾がこの漫画の魅力。