カテゴリ:少年漫画(Gファンタジー)
ジャンル:異世界魔法ファンタジー
特徴:近年の作品にはない圧倒的なスケールと重厚なストーリー
聖戦記エルナサーガ1【電子書籍】[ 堤抄子 ]
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もう20年くらい前の作品だが、個人的に最高の異世界物語だと思っている。
最近の「アルスラーン戦記」がやけに子供じみた作品だと感じるのは、これが偉大すぎたからだと気付いた。
舞台設定はナウシカに近く、魔獣のもたらす魔風で地球の大半が汚染され、人類は聖剣に守られた限られた土地で戦争をしている。
主人公のエルナ姫は魔法が使えない代わりに聖剣を抜くことができる唯一の存在であり、世界を滅ぼす使命を持ちながら戦争を止めるために奔走する。
エルナサーガにおける魔法は誰にも宿る普遍的な力であり、エルナ以外の王族は強力な魔法を使うことができる。
魔法の描写は圧倒的で、その呪文詠唱と浮かび上がる魔法陣は極めて美しい。
呪文詠唱を行う漫画は多数存在するが、未だにこれを超える作品は見つからない。
魔法が存在するにもかかわらず、この世界は酷く現実的で非情。
魔法は細菌兵器、人体改造、ゾンビ蘇生みたいにも使われているし、戦争でバンバン人が死んでいく。
兵士は巨大な昆虫に改造され、自我すら奪われて殺し合う。
続編のエルナサーガⅡでは核撃魔法を使って核ミサイルを演出し、大国同士の戦争を引き起こそうとする描写すらある。
決して楽観的とは言えない厳しい世界で、魔法すら使えない心優しい少女がいかに争いに立ち向かうのか。
その壮大な物語はタイトル通りサーガと呼ぶに相応しい。
今振り返ると古臭い感じもあるが、近年の作品とはそこに込められた重みがまるで違う。
安易なハーレムやパロディが氾濫する現在の異世界作品を見ると、エルナサーガのような芯のある漫画が懐かしくなる。