からくりサーカス 評価A
著者:藤田和日郎
カテゴリ:少年漫画(サンデーコミックス)
ジャンル:人形バトルアクション
特徴:サンデー随一の名作
からくりサーカス(19)【電子書籍】[ 藤田和日郎 ]
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「アニメ化して欲しい漫画アンケート」を見たら、からくりサーカスが3位になっていた。
藤田和日郎といえば「うしおととら」を思い浮かべる人が多いだろうが、個人的には「からくりサーカス」が最高の漫画だと思う。
正直、あれほどの名作がなぜ未だにアニメになっていないのか理解に苦しむ。
からくりサーカスは、
・サーカス編(勝編)
・からくり編(鳴海編)
・からくりサーカス編
・機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)編
から成る長編だが、加藤鳴海を主人公とするからくり編が他を圧倒するほどの熱さを誇る。
特に最古の四人+フランシーヌと対決するからくり編の終盤は最高潮の盛り上がりを見せてくれる。
その後の黒賀村の話がイマイチなのが残念だが、最終章は鳴海や最古の四人も再登場しているのでトータルではやはり面白い。
設定上は勝・鳴海・しろがねの三人が主人公となっているが、私は鳴海が本当の主人公だと思っている。
天才少年の勝より、病気(ゾナハ病)の子供達のために命を賭けて戦う鳴海の方がずっとカッコいいから。
最終章も鳴海がメインだったら良かったのに。
本作の魅力は迫力のある人形バトルだけでなく、巧妙に張られた伏線とオートマータの悲哀にある。
人間からすれば人形達は病原菌をまき散らす害虫に過ぎないが、その存在意義は「愛しい女性を笑わせる」ためにあったのだから、一方的に悪と断ずることもできないだろう。
不死の秘薬と何万という機械人形を作り、何千年もかけて戦い続けた目的が、たった一つの笑顔のためとは、読者の誰が想像しただろうか?
既に滅んだフランシーヌのために死のサーカスを続ける最古の四人も、人間辞めてまで戦って散っていくしろがね達も、涙なしには見ていられなかった。
最終章のどんでん返しで若干納得の行かない部分も出てくるが、ここまで壮大で最後まで伏線を回収しきった少年漫画は他にあるまい。
残念ながら、次回作の「月光条例」はおとぎ話と魔法設定が子供向けすぎて、大人が読めるものではなかった。
現在連載中の「双亡亭壊すべし」は逆に難解すぎて、独りよがりになってしまっている。
からくりサーカスこそ藤田和日郎氏の代表作と考える身としては、鳴海編のような熱くも悲しい戦いをまた見せて欲しい。