著者:間瀬元朗
カテゴリ:一般漫画(ビッグコミックスピリッツ)
ジャンル:ヒューマンドラマ
特徴:簡単に人を殺す不条理な法律
何千冊という漫画を読んできたが、一番ムカついたのはイキガミ。
死体をウナギに食わせる漫画や高校生に殺し合いをさせる漫画など残酷な漫画はいくらでもあったが、単行本ごと破り捨てたくなったのはこれ以外にない。
正直、感想を書いているだけではらわたが煮えくり返ってくる。
この世界には「国家繁栄維持法」というバトルロワイヤル法並みの悪法があり、1000分の1の確率でランダム選ばれた青年にはもれなく死亡予告証(逝紙)が与えられ、24時間で死亡する。
「国民に生命の価値を再認識させる」という題目を掲げてはいるが、要する国家による無差別殺人である。
自分の余命がたったの1日であることを知った若者たちはそれぞれに思い悩み、最期の時を過ごす。
ある者は自暴自棄になって暴れ、ある者はできる限りの贅沢をし、またある者は静かにひっそり消えていく。
死期が近づいた者達の見せるドラマは確かに切実で、感動すると言う人も多い。
だが、それは根本的に間違ってるだろ。
どうしようもない自然的要因や主義の衝突の上で犠牲が出るのなら、仕方ない部分もあるだろう。
しかし、イキガミは人間が勝手に作った悪法に過ぎない。
故意に殺して無理矢理悲劇を作っておいて、感動も何もないだろう。
単にこの世界の住人は腐っているとしか私には思えない。
設定もクソだが、それ以上に腹が立ったのは、作者自身がこの作品を否定していることだ。
後半でイキガミに反対するまっとうな価値観を持ったレジスタンスが登場し、主人公もそちらにシフトしていく。
100%狂った法律なので当たり前だが、後から否定するなら最初からやるなと言いたい。
曲がりなりにも日本全体で何十年も続いてきた法律だと言うなら、一部の正当性は見せるべきではないだろうか?
これまで数多の人にデスカードを配ってきたのなら、せめて主人公くらいは自分の仕事に責任を持つのが筋ではないか?
どんな不条理な設定だって、漫画の中なら許される。
罪のない人を何万人殺したっていい。
けれど、無理に作った設定で感動させようとしたり、革命を起こそうとするのは違うだろう。
そういうのを人は自作自演と呼ぶのだ。