カテゴリ:一般漫画
ジャンル:SF漫画
特徴:映画とは比べ物にならない完成度の名作
私はジブリ作品が死ぬほど嫌いだが、ナウシカの漫画版だけは認めている。
映画版ははっきり言ってゴミだが、漫画版の出来は漫画界でも最高と言っていい。
というのも、ナウシカ映画版は全体の1/3以下の内容しかなく、序盤の説明をこなしているに過ぎないからだ。
本当の物語はナウシカが大海嘯を止めた後から始まる。
滅びつつある世界でもなお争いを止めないトルメキアとドルクの二国は、現代社会にも通じる人間の愚かさの象徴。
ヒドラや人工粘菌といった禁忌に手を染め、大海嘯で土地の大半を失いながらも覇権を求めるドルク皇帝は、足るを知らない私達そのものではないか。
映画だけ見た人の中には、本作のテーマを「もののけ姫」と同じ自然の怒りと考えている人もいるかもしれないが、それは全く違う。
腐海も王蟲も巨神兵も、現行人類ですらかつての人間が作り出した産物である。
全てはどうしようもないほど汚染された世界を蘇らせるために、巧妙に仕組まれている。
人間のカルマと生きる意思こそが、本作の主題だと思われる。
生まれ変わった世界にはきっと、憎しみで汚れた人間は必要ないのだろう。
だから、清浄な空間でナウシカ達は生きていくことができず、人間の卵が墓所で静かに眠っている。
人間は愚かで、本当にどうしようもない。
けれど、どんなに業を背負っても、私達は生きていくしかない。
ここまで深いメッセージが込められた作品が映画のオマケとして扱われているのは、実にもったいない。
風の谷のナウシカ(7巻セット)
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