カテゴリ:少女漫画(フラワーコミックス)
ジャンル:恋愛ファンタジー
著者:藤間麗
特徴:水神に屈せず懸命に生きる少女が美しい
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「神様と生贄に捧げられた少女」と言うと、いかにもなテンプレ。
大抵「神様が意外と優しくてカップル成立」か「神様が外道で性欲のはけ口」のどちらかになりそうな気がするが、本作はどちらでもない。
水神は人間ではないので、人に愛情など持たない。
もちろん、欲望の対象にもしない。
ただ人間の滑稽な振る舞いを見て、嘲笑うのみである。
日照りが続けば人は竜神に祈るが、それは神が雨を降らす理由にはならない。
人間がいくら死のうが、神仏には何の関係もないのだから。
巫女の力を巡って村同士が争おうが、神がそれを止めることはない。
俗世のことなど、天上には何の関係もないのだから。
それなのに人は神が願いを叶えると信じ、天災や病気を神の怒りと恐れる。
人はみんな、自分以上の力など持ち合わせてはいない。
くだらない迷信に憑りつかれて少女を湖に沈めた愚かな人間。
気まぐれでしか動かず、ただ嗤うだけの邪神。
実に愚かで、救いようがない。
そんな両者を、一人の少女がどう変えていくのか。
力なき人間と心なき神に、何を伝えるのか。
これはそういう物語である。