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<あらすじ>
児童相談所に勤務する夏目アラタは、担当児童の卓斗から「父を殺した犯人に代わりに会って欲しい」という依頼を受ける。
犯人の名は品川真珠。
情報を引き出すために、アラタは連続殺人犯と結婚。
夫婦として心理戦を繰り広げながら、事件の真相に迫っていく。
何千もの漫画を読んできた私だが、こんなにヤバカワイイヒロインは初めて見た。
一言で表せば、カマキリ。
うっかり一夜を共にすれば、間違いなく雄は食われてしまう。
それなのに、雄の本能は彼女の柔らかい肌に触れたいと叫び続ける。
殺人犯とは思えない美貌。
不釣り合いに悪い歯並び。
常人の理解を超えた知能。
虚構と現実を織り交ぜた不可思議な言動。
本当に底が見えない、扇情的でミステリアスなヒロインが魅力。
謎に包まれた殺人少女はもちろん、それに求婚する主人公もヤバい。
死体の頭部を見つけるために獄中結婚し、偽りの愛情をもって男女交際と言う名の心理戦を繰り広げる。
9分9厘彼女は殺人犯で、判決はまず覆られない。
頭部を見つけたらとっとと離婚して、絞首台に送ってもらえばいい。
それなのに、いつしか男は彼女を意識し、見捨てられなくなる。
それは妻への愛情なのか?
それとも、児童相談員としてのネグレクトされた少女への同情なのか?
万が一にも彼女が無罪を勝ち取り、二人が本当の夫婦になることはあり得るのか?
『医龍』、『幽麗塔』『第3のギデオン』の乃木坂太郎先生の画力はお墨付き。
登場人物の知能は総じて高く、裁判官や検事のリアリティが物語に没入させてくれる。
散りばめられた伏線が回収されながらも、より深い謎へ落ちていく感触はたまらないものがある。
危険な状況でこそ恋愛が燃え上がることを吊り橋効果と呼ぶが、それをここまで克明に描いた作品は他にあるまい。
ああ、この悪女に喰われたい。