カテゴリ:一般漫画
ジャンル:科学・哲学
著者:魚豊
特徴:権力の弾圧と科学探求のせめぎ合い
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地動説とキリスト教の弾圧を描いた漫画。
タイトルはおそらく、地(地動説)と知(真理)と血(拷問)を掛け合わせている。
本作にはコペルニクスもガリレオ・ガリレイも多分登場しないが、代わりに多数の人物が地球の運動に気付き、その学説を伝えていく。
恐るべきは、C教徒による迫害。
現代でこそ思想の自由が認められているが、舞台となる15世紀は教会の権威が絶対的。
「神が地球を宇宙の中心として創った」とする天動説が絶対的に正しく、地動説は神に反逆する悪魔の思想として厳しく取り締まられた。
地動説の研究をしただけで、いかなる者も異端扱い。
拷問を受け、目を焼かれ、地動説を捨てなければ殺害される。
天文学に命を賭けるなんてバカバカしい。
地球が動いていようが太陽が動いていようが、私達の生活には関係ない。
天動説を認めて、賢く立ち回ればいい。
しかし、学者達はそれを認めない。
命の危機に晒されても「それでも地球は回っている」と叫ぶ。
なぜなら、それは真理だからだ。
真理の追究は時に生命の維持に優先し、それに殉じる科学者の姿は何よりも気高く美しい。
例え自分が死んでも、その思想は次の誰かに受け継がれる。
真理を探究する心は全ての人間の心の奥に存在するからだ。
おそらく、これを読んでいる君の中にも。
大事なのは地動説ではない。
人間が根源的に持つ願いだ。
権力者がいかにそれを妨害しようと、私達は真実を求めずにはいられない。