カテゴリ:一般漫画(講談社漫画文庫)
ジャンル:劇画
特徴:地獄の拷問があまりにも残酷
悪魔の描写に定評のある永井豪が、ダンテの神曲を漫画化した作品。
氏の作品(デビルマンレディーなど)では度々地獄や化物が描かれるが、その中でも最もハードで目を背けたくなる内容。
生前罪を犯した人間は地獄に落ち、何百年もの間拷問を受け続ける。
・熱湯で焼かれ続ける者
・鬼に嬲られ続ける者
・互いに殺し合い続ける者
・極寒で凍え続ける者
など様々な形が存在するが、いずれも容赦ない残酷さで、全ての地獄が克明に描かれている。
登場人物は必ずしも悪人というわけではなく、トロイの木馬の英雄など人類史に大きな貢献をした傑物も多い。
それでも生前に僅かな悪事を犯した者はこれでもかと強烈な罰を受けるため、この世界の成り立ちに強い不条理を感じる。
地獄を作った神とやらは、何の権限があってこのような非道を働くのか?
地獄編の後は自分に罰を与える修行者、その後は天国の世界が描かれる。
しかし、天国の話は地獄に比べると遥かに短く、描写も充実しているとは言えない。
そもそもあれだけの絶望を延々と見せられた後に「善人だけの幸せな世界」を見ると、かえって欺瞞と不平等を感じざるを得ない。
幾多の地獄を超えて天国に辿り着き、神の愛に触れたダンテ・アリギエーリは、カルマの大小で死後の扱いが決まるこの世界の仕組みに納得したのだろうか?
聖人君子には程遠い私には、とてもそうは思えないのだが。