荒川弘の『黄泉のツガイ』がアニメ化されるとのことで全話読んでみたが、とても残念な漫画だった。
鋼の錬金術師やアルスラーン戦記は間違いなく名作と言っていいが、こちらは実にもったいない。
前作までの期待が大きいだけに、肩透かしを食らった気分だ。
本作の作画やバトルアクションは過去作に劣るものではないが、はっきり言って読者視点の話作りができていない。
NARUTOの岸本斉史がサムライ8で暴走したように、一度大成功した大御所は編集を無視して設定を凝り過ぎて失敗してしまうものなのかもしれない。
初期からのハガレンファンとして、ツガイの欠点を分析してみたいと思う。
【黄泉のツガイの欠点】
・説明不足で話が進み、読者が置いてけぼりにされる
・敵味方がわかりにくい
・主人公に主体性や大義がない
・ツガイの設定からパートナーとの絆を築きにくい
・人がゴミのように死ぬ
・妹の能力がチートすぎる
・死人が蘇ると緊張感がない
この作品の序盤は、あまりにも説明不足。
自分の生まれ育った東村に謎の武装集団が攻め込んできて、村人が次々と殺される。
本物の妹を名乗る女性に妹が殺され、村の守り神であるツガイと契約して別の場所に移り、誰が敵で誰が味方かもわからないままひたすら殺し合い。
謎を残して読者の興味を引く手法なのだろうが、いくら何でもやりすぎ。
まずは村への愛着やツガイの設定を馴染ませてからでないと、いきなり現れたテロリスト(自称妹)に反感を抱くだけだろう。
説明パートに移ってだいたいの勢力図がわかってからも、話として面白いとは言い難い。
というのも、この主人公と戦闘の目的が全く一致していないからだ。
ユルの目的は簡単に言うと「妹と平和に暮らすこと」で、妹のアサもだいたい同じ。ハガレンやアルスラーンは弟の蘇生や国の奪取という大義があって戦っていたのに、この双子にはそれがない。
主役は伝説的な超能力で天下を取るなんて全く考えていないのに、周りは勝手に盛り上がって数百年前の戦を繰り返そうとしているのだからアホすぎる。
本人にその気がなく、敵を返り討ちにするだけのスト-リーほどつまらないものはないだろう。
Fateのように主人公が巻きこまれでもパートナーに大義があるならそれもいいが、残念ながらそれもない。
守り神の男女はどちらもバトルが好きなだけで、人間の社会に干渉する気は全くない。
しかも男女一対になっているせいで、ユルとのカップリングすら成立していない。
Fate衛宮士郎のパートナーがセイバー・アーチャーの二人だとしたら、戦力過剰な上に二人で漫才を始めてしまうので主人との絆も深まらないだろう。
うしおととらにせよガッシュにせよ、パートナーものは主人と相棒の二人にしないとバランスが取れない。
オリジナリティを出すためにツガイという無理な設定をねじ込んだことが、本作の目玉であり最大の欠点と言える。
バトルのアクションは流石に上手いが、ポンポン人が死ぬような能力が多すぎて少年漫画的な面白さは期待できない。
特に酷いのがアサの『解』の能力で、結界でも契約でも何でもあっさり解除できてしまう上に、その気になれば人の首もあっさり斬り飛ばせてしまう。
ユルの『封』の能力も目覚めれば敵を閉じ込めたり寿命を永遠に引き延ばしたり、インチキな使い方が色々できるらしい。
こんなチート能力を何の代償もなく使えてしまったら、白熱したバトルを描けるわけがない。
しかも主人公は設定上一回死んでも能力を得て復活するらしい。
蘇生しない場合もあるらしいが、可能性があるだけで命を賭けた戦いのスリルが薄れるというものだ。
このように本作はツガイという設定で無駄にキャラを増やしまくった挙句、説明不足のまま大義のない殺し合いをさせられるという、相当に狂った漫画になっている。
いくらハガレンの大御所とはいえ、読者のことを全く考えていない設定は擁護のしようもない。
ここまで話が進んでは今更軌道修正もしようがないだろうが、次回作はちゃんと編集(あるいは原作)を付けて読みやすい漫画作りに専念してほしい。
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