カテゴリ:一般漫画(となりのヤングジャンプ)
ジャンル:社会風刺漫画
漫画における表現の自由の侵害を描いた怪作。
舞台は2020年東京オリンピック前の日本で、「健全図書法」により多くの漫画が規制を受ける。
残酷な表現、暴力的な表現、性的描写は世の有識者によって判断され、有害図書認定を受けたうえで、販売中止や回収の処分となることもある。
作中では「人を食う病原菌」が蔓延したバイオハザード的な漫画が主題になるが、規制を回避するために内容を変更したり、Web漫画に移行したり、これでもかと妨害と戦うことになる。
基本的には残酷描写に対して規制が入るが、段々エスカレートしていき、
・煙草を吸っている青年が高校生に見える
・怪我をした少女が喘いでいるのが性的に見える
といったやりすぎな指摘もあり、公開裁判や強制プログラムまで行われる。
「小便小僧は性器を丸見えにした児童ポルノだから破壊する」
の論理は、正直笑った。
この国の有識者は、アホしかいないのか。
端から見るとあり得ないほど厳しい規制だが、現実に似たようなことは度々起こっている。
作中の健全図書法は、
「殺人犯の家からそれを示唆する漫画が発見され、マスコミによって拡散された」
という事件が元で成立したことになっているが、これこそ事件が起こる度に漫画やアニメ、オタクが叩かれる歪んだ報道体制そのものだろう。
また、同作者の「マンホール」は実際に長崎県から有害図書認定されているため、事実を元にしたフィクションと言えるかもしれない。
実際に編集者が漫画の表現にチェックを入れ、訂正させることは珍しくないようだ。
デスノートは、PTAの苦情によって路線変更を余儀なくされたと言われている。
露骨な障害者やヘイトスピーチに関する内容は、少年漫画にはまず出てこない。
漫画では良くても、アニメ化やドラマ化で内容が修正されることも多い。
戦争漫画(キングダム)の指切断でさえ放映できないのは、正直やりすぎだと思う。
規制というのは国民の意思が及ばない所で決定され、一度決まると際限なくエスカレートしていくものである。
「暴力表現なんていらない」
「規制されてもロリコンだけしか困らない」
なんて楽観していると、いずれ全ての創作が死に絶えるだろう。
有害都市のような 世界が現実にならないことを強く願う。
有害都市 上【電子書籍】[ 筒井哲也 ]
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