<あらすじ>
交番勤めの警官・蛇ヶ崎晋太郎は満たされない日々を送っていたが、壊人(カイジン)という化け物に襲われ、自らも壊人と化す。
壊人の正体は欲望に囚われた人間。
正義感ではなく自分の欲望を叶えるために、蛇ヶ崎はダークヒーローとなって壊人を狩り続ける。
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ヒロアカと寄生獣を足したような漫画。
「人類を脅かす怪物が現れ、主人公も怪物の力を得てそれを倒す」
という百万回は見たような設定だが、そういったテンプレ作品のアンチテーゼでもある。
なぜなら、ジャガーンは正義とは自慰行為、あるいは暴力と考えているからだ。
・ワンピース
・水戸黄門
・ナルト
・ヒロアカ
・鬼滅の刃
あらゆるバトル作品は大小の差こそあれ、いずれも勧善懲悪の要素を含んでいる。
主人公は基本的に民衆の味方で、社会を乱す悪者や怪物に対して攻撃を行う。
「正義のための暴力なら、それは許される」というスタンスだ。
だが、ジャガーンからすれば、それは正義の皮を被ったオナニーでしかない。
ヒーローは暴力が好きだとは言わない。
敵を殺したいわけではない。
弱者を救うために戦っているのだと、大義名分を掲げる。
だが、本当にそうだろうか?
ジャガーンは言う。
正義は快楽を得るための行為だと。
正義の味方は、許される相手に暴力を振るって欲望を満たしているのだと。
原始の時代から、私達の祖先は外敵と戦ってきた。
ネアンデルタールと戦い、イノシシやクマと戦い、外国人と戦い、それらを悉く殺し尽くしてきた。
自集団を守り外敵を殺すのは、生存における最重要事項。
この上ない快楽としてインプットされてきたのだ。
「社会に悪と見なされた敵を攻撃する」
何万年もかけて培われた強力な本能が、現代人の中にも潜んでいる。
不倫した芸能人や転売屋、メダルを噛んだ市長をSNSで中傷する人々がその証拠だ。
自身とは利害関係もない相手でも、殴って賞賛されるのは至上の快楽。
正義の名の下に犯罪者を裁くほど、気持ちの良いことはない。
ほんの100年足らずで世界は急速に平和になったが、人類の本質は変わっていない。
未だに「敵を殺したい」という衝動を抱え、「暴力を振るっても許される悪が現れてくれないか」という願望を秘め続けている。
だから悪人が出る漫画は飛ぶように売れるし、テレビやネットで失言を見かければ皆が批判を浴びせかけて、ドバドバとドーパミンを放出させて快楽に浸る。
「殴りたいけど、殴っていい相手が見つからない」
誰もが抱えるクソみたいな暴力衝動を慰めてくれるのが、上記に挙げたようなヒーロー作品。
それをオナニーと割り切って、自身の欲望と向き合うのがジャガーンだ。