カテゴリ:青年漫画
ジャンル:邪道異世界ファンタジー漫画
特徴:ファンタジーなのに、ありとあらゆる所に妙な説得力がある
「プリティベル」や「ダークドリーム」と同じKAKERU氏の邪道漫画。
ドラクエなどの王道ファンタジーをなぞりつつも、独自の超解釈と迫力で押し切る手腕に心から感服する。
世界を救った勇者が敵で、倒された魔王が仲間。
さらに主人公はルーラ専門の移動魔法使い(マクロドライバー)というかなり無茶な設定だが、それが見事にはまっているから困る。
考えてみれば、ルーラというのは一瞬で国を渡るとんでもない魔法である。
力学的に考えれば、イオナズンやベキラゴンなど相手にもならないエネルギーと、精密動作を兼ね備えた超魔法。
勇者や魔王より、ルーラ使いのほうが強くて当然なのかもしれない。(倒錯)
ルーラに限らず、あらゆる魔法や武器、国家や種族が現実的な解釈の上で成り立っている。
私達がゲームや漫画で何気なくスルーしているファンタジーの些細な部分を物理的に説明しつつ、矛盾なく仕上げているのだから凄い。
従来の漫画の鎧は現実的には重すぎて、使い物にならない。
策敵魔法や通信魔法は、攻撃魔法より遥かに戦略的価値がある。
医療と回復魔法は、人体実験と動物実験の集大成である。
特にマスコットかつ駆除対象のゴブリンの殺られっぷりは、必見。
死んでも死んでも湧いてくるグロカワマスコットは、この漫画以外では見られないだろう。
戦いは少年漫画のような気合と友情ではなく、知性とハッタリがメイン。
レベル99同士の迫力のある戦いも良いが、それ以上に竜鎧を付けた一般人の戦いが面白い。
自分より遥かに強い相手と戦いながら成長するスタンピードの活躍は、「ダイの大冒険」のポップを彷彿させる。
むしろこの作品の主人公はマクロドライバーのルーシュではなく、読者視点に位置するスタンピードではないかとさえ思う。
KAKERU氏特有の露骨な現実主義や、プリベル以上の性的描写、死亡時のグロさなど、鼻に付く点は確かに多い。
正直、一部のキャラ(ルサルカなど)の露骨な持ち上げっぷりは、私も嫌悪感を感じるほど。
しかし、ここまで真面目にファンタジー世界を考察し、描き切った作品は他にない。
とにかく、面白いんだよ!