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<あらすじ>
奴隷の少年『ア』は借金を返済するため、駆け出しの仲間とともに迷宮に挑む。
・書籍版(KADOKAWA)
・Web漫画(せいほうけい)※絵は適当だが、味があって萌える
・商業漫画(荻原敦)※絵は綺麗だが、まだ序盤
・主人公が魔術師
・嫁が3人
・人々との出会いを通して成長していく
・創意工夫で魔術を作る
・主人公より強い奴はいくらでもいる
といった共通点もあり、無職ファンにも推薦したい。
もっとも世界観はかなりシビアで、なろうのチート無双を期待するとショックを受けるだろうが。
本作の最大の特徴はなんといっても、ウィザードリィベースの残酷な世界設定。
ゲームがそうであるように商店はボッタクリで、宗教家は狂人で、魔物の攻撃は容赦なく、人間の命は軽い。
現代日本人が転生する異世界ではメインキャラが死んだら一大事だが、本作はパーティメンバーだろうと嫁だろうと、いともたやすく死亡する。
一応復活方法もあるがそこはさすがにウィズ方式で、金貨1000枚の代金と失敗確率で、殆どのキャラが灰になって消える。
えげつない設定と思うかもしれないが、RPGの経験者ならそこは納得せざるを得ない。
中身はニートのおっさんであるルーデウスと違って、残酷な世界で育った冒険者にはチープな道徳観は備わっていない。
迷宮で会えば、たとえ人間でも迷いなくぶっ殺す。
一見サイコパスに感じる言動も、この作品の魅力の一つ。
即死する宝箱や壁の中へのテレポートなど鉄板ネタでニヤニヤするのもいいが、主人公の成長、成り上がり要素も見逃せない。
キャラ作成が面倒くさくなったプレイヤーによる被害者のごとく、名前は『ア』。
戦士の才能も盗賊の器用さも僧侶の信仰心もなく、消去法で魔導士になった。
布の服で杖もなく、火の玉一発で魔力が尽きる。
こんな圧倒的な弱者から、仲間の犠牲と機転で成り上がっていく過程は非常に面白い。
転スラのようなクソチートなら神が与えたチートスキルや武器であっさり最強になるだろうが、ウィズ世界に近道は存在しない。
力を得るには代償が必要で、どんなに強くなっても一撃死の恐怖からは逃れられない。
冒険者の力の源は、迷宮順応。
簡単に言えば、迷宮の呪い。
より多くの敵を殺し、自らを魔物に近づけることで冒険者は強くなる。
つまり、成長とは人間を辞めるのに等しい。
奴隷から解放されて妻や子を持つ展開は望ましいが、迷宮に挑んで富と力を得なければ、それは叶わない。
だが、迷宮を進み続ければ体は魔力に順応し、いずれ外で暮らせなくなり、最下層へ滑り落ちるしかなくなる。
途中で冒険者を引退すれば、愛する妻子と暮らすことも可能だろう。
しかし、これでもかと風呂敷を広げて宿敵を増やした以上、決着を付けずに逃げることは不可能。
果たして『ア』は自らも魔物となり、地獄の底へ転がり落ちていくのか?
それとも迷宮の謎を解いて、絶望的な世界に希望を見出すのか?